12.9 TUE

『イグノラムス・イグノラビムス: 音楽とは何か』

鈴木學+木下和重

「イグノラムス・イグノラビムス」という言葉には、20年ほど前に読んだ「混沌からの秩序」(I.プリコジン、I.スタンジュール、みすず書房)の中で出会った。プリコジンの名を見つけて読んだ本であるが、彼は今や美術界でもポピュラーな言葉である『複雑系』の科学の発端となった業績を上げた人物である。
それによると、「イグノラムス・イグノラビムス」は19世紀末生理学者のデュ・ボア・レイモンが発言した言葉である。直訳すれば、「われわれは知らぬ、われわれは知らぬであろう」となる。発言者の意図をくみ取り言葉を補足すると、「科学の世界と、この科学を知り、感じ、創造する精神との関係について、われわれはいつもまったく無知のままであろう」となる。
この文の「科学」を「音楽」に置き換えると、今の私と音楽との関係が見事に表現されている。
ふふふ……。

(鈴木學)

時間 18:00–20:00
場所 武蔵野美術大学9号館 3-306C(タスクルームRed)


鈴木學 Manabu SUZUKI

2000年、エレクトロニクス技術を用いた自作楽器等の設計制作、それらを使った即興演奏等の活動を開始。ライブスポット大崎 l-e を中心に活動。
アナログ発振器、デジタル音源、マイコン、MIDI、無線機器、映像信号を応用した作品を制作。音楽家らかの受託制作も行う。依頼者には、故東山嘉事(美術家)、一樂義光(ドラびでお)、田口史人(円盤店主)、杉本拓(音楽家)、伊東篤宏(optron)、角田俊哉(wrk)らががいる。

参加CD作品等
・Septet//2013 (Pico-05/06)
・Kantoku Collection (Slubmusic, SMCD 18)
・Live installation at loop-line recorded by toshiya tsunoda (Skiti, sk05)
・imai kazuo trio『Blood』CD+DVD (doubtmusic, dmf-124CD / 125DVD)
・IMPROVISED MUSIC from JAPAN 2009
・yui onodera le-jardin (alm45)


木下和重 Kazushige KINOSHITA

音楽家/ヴァイオリン奏者/レーベル「tenseless music」主宰
細馬宏通 率いる「かえる目」では歌も披露

1970年、神戸に生まれる。1995年に内橋和久氏主宰のワークショップNEW MUSIC ACTIONに参加、即興演奏を中心としたライブ活動を開始。また、関西学院大学大学院にて音楽美学を専攻。

ヴァイオリンそれ自体から発せられる現象としての音に着目し、圧力や摩擦という身体行為との対話によって生まれる音を時間上へ布置させる即興演奏を特徴とする。

木下が提唱するセグメンツとは、ジョン・ケージの構造論を基盤としており、鑑賞者が従来のフォーマットとは異なる音楽/アートを理解、そして解釈を可能にさせるためのコンセプト/装置のこと。佐々木敦氏の著作『「4分33秒」論』において、ジョン・ケージ作『4分33秒』以降の実践としてセグメンツが紹介される。

《セグメンツ関連CD》
『segments』木下和重, slubmusic, SMCD 12
sediments』Segments String Quartet, tenseless music, TLM-002

《関連HP》
tenseless music
木下和重 BLOG